民事再生法における個人再生手続を利用するための要件が複雑ですので、概略を示しておきます。
申立手続
債務者の住居地の地方裁判所に申立書と添付書類を提出します。
なお、申立及びその後に続く手続はかなり複雑であり、申立から終了まで約半年くらいかかると裁判所は予定しています。(現在の破産手続も同じくらいかかります)又、裁判所は手続が複雑なため、できるだけ弁護士による申立を望んでいるようです。
例として東京地方裁判所の手続標準スケジュール表を掲載しておきます。
再生手続の対象者
【2種類の対象者】
個人再生手続の対象者には、@小規模個人とA給与所得者等の2種類があります。
@小規模個人(自営業者など)
将来的に継続反復して収入を得る見込みのある者(民事再生法第221条)であって、負債総額が3000万円を超えない者。
A給与所得者(サラリーマンなど)
給与又はこれに類する定期収入があり、その額の変動幅が少ない者(同法第239条)であって、負債総額が3000万円をこえない者。但し、負債総額は住宅ローン、別除権(抵当権など)でカバーされる額を除いて計算します。
【対象者による手続の違い】
両者の相違点は、手続に債権者の同意を要するかどうかという点と、最低限弁済しなくてはいけない額が異なるという点です。
小規模個人の場合は、裁判所は債権者に通知、書面による同意、すなわち、再生計画による弁済に同意するか否かの回答を求め、不同意が債権者の過半数の時は再生計画を許可しません。
これに対して、給与所得者の場合は、債権者の意見は求めますが、同意は不要です。その分、後述のとおり最低弁済額などの要件が厳しくなっています。
許可決定を受けると債権者の債権額は8割方カットされ、さらに残額を3年〜5年の分割返済すればよいこととなります。
手続が許可されるための最低弁済額
【最低限返さなければならない金額】
@小規模個人の場合(同法第231条)
原則として債務者が3年間で返済可能と計算した額(計画弁済総額)が、債権総額から抵当権などでカバーされる額を除いた債権の総額(基準債権総額)の5分の1又は100万円のいずれか多いほうの額。
但し、基準債権総額の5分の1が300万円を上回るときは300万円を上限としますので、300万円となります。
A給与所得者の場合(同法第241条)
まず、@の要件を満たすこと。且つ、過去2年間の収入から最低限度の生活費を除いた額(弁済に回せる額)が上記@の最低弁済額より多いときは、その額。(最低限度の生活費は生活保護の基準で算出します。)
債務者にとって有利な効果
【強制執行の中止】
例えば給与を差し押さえられた場合、その中止命令を裁判所に求めることができます。また、再生手続開始決定のあったときは、強制執行は許されず、現に継続中のものはその効力を失います。
但し、住宅ローンの抵当権による強制執行は別除権によるものですので、同じようにはいきませんが、住宅ローン特別条項の再生計画案が許可の見込みある場合、裁判所はその強制執行の中止を命ずることが出来ることになっています。
弁済禁止の効果
【弁済してはいけません】
再生手続開始後は、再生債権の弁済は法律上禁止されます。(同法85条)
事業者で手形を振り出している場合は、不渡りになると事業の継続(再生)が極めて困難になります。したがって、申立後(再生決定前)は、まだ弁済禁止の効果が生じないので、別に弁済禁止の仮処分を求めて不渡り処分を免れる必要があります。
開始決定後は、仮処分ではなく、法的に弁済が禁止されるので、裁判所はその旨の命令書を出すと考えられます。それら弁済禁止命令を銀行に提出すれば、不渡り処分は免れます。
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