訴訟は判決まで相当の期間がかかるので、判決が出たときに強制執行しようにもその目的物又は相手方の資産が逸散されてなくなってしまうおそれがある場合、あるいは事案の性質上迅速に裁判所の命令を必要とする特別の理由があるときにこの手続をとります。この手続には、「仮差押」、「仮処分」というものがあります。
【仮差押】
目的は前述した相手方の財産の散逸を防止するためです。仮差押押さえの対象は、不動産、動産、債権、特許権等、財産的価値のあるもの全てに及ぶことが出来ます。この申立も訴訟と同様に申立の趣旨、申立の理由(権利の存在と保全の必要性)を記入した申立書を疎明資料(書証と同様)を添えて裁判所に提出します。
多くの場合、申立日、又はその翌日裁判官と面接して仮差押を許すかどうか決定されます。決定を出すにあたって、裁判所は相手方に反論する機会を与えていないこともあって、申立人に保証金を立てさせます。(大体、仮押さえ対象物価格の2〜3割)
保証を立てたことを証明(多くの場合法務局に現金を供託し、その供託書を提出することによる)すると、2〜3日で仮差押決定が発布され、対象が不動産であれば仮差押の登記(登録免許税が必要)を裁判所から法務局に嘱託してなしてくれます。そして、相手方(保全手続では債務者といいます)に仮差押決定正本を送達します。
対象物が登記登録されているものは、そのようにしますが、債権(売掛金や給与債権など)が対象であるときは、その支払いをするもの(売掛先、勤務会社など)に対し、その支払いをしてはならない旨の決定正本が裁判所から送達されます。仮差押をすることによって、しばしば話し合いで解決できる場合もありますが、そうでないときは訴訟を提起し、判決等(債務名義)を得て、本執行(俗に仮差押押さえに対してこのようにいわれます)をかけるわけです。
【仮処分】
「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」と二種類あります。仮差押は、本差押を予定する仮の強制執行ですが、仮処分は本案訴訟(保全訴訟に対する用語として前述した一般の訴訟をいいます。保全訴訟は本案訴訟の目的達成のためのものです。)に対応する迅速な仮の処分ですから、その内容は訴訟と同様に多種多様です。
@係争物に関する仮処分は、本案訴訟の目的達成のため 予め一定の法的処置をとっておくもので、例えば「占有移転禁止の仮処分」が、この型の仮処分でしばしば利用されます。例えば、建物を不法占拠している者に対して明渡訴訟を提起するとき、判決が出るまでに占有者が別の人になってしまうとせっかく勝訴判決を得ても無意味になってしまいます。そこで、当初の占有者を法的に固定しておき、そのものを被告として訴訟を進めることができるようにするのです。もし、仮処分に違反して第三者に占有を引き継がせたとしても、第三者は申立人に権利を対抗することが出来ません。この型の仮処分は訴訟の目的となるものの現状維持を法的に認めるものなのです。工事禁止の仮処分なども同じです。
A仮の地位を定める仮処分は、将来の強制執行のためのものではなく、緊急に法律関係を是正する必要がある場合、その終局的解決に至るまでの間、暫定的な措置を仮処分決定で定めるものです。例えば「解雇無効・賃金支払いの仮処分」や「子の引渡の仮処分」などがあげられます。
仮処分決定には強制力(執行力)が認められますから、相手方の言い分を聞くための期日(審尋期日)が設けられます。この期日は、通常の裁判における期日と実質的には同じものですが、1ヶ月に1回ではなく、一週間に1回くらい設けられ、出来るだけ短期間で審理されるようになっています。この間、両当事者の話し合いで解決される場合も多々あります。(訴訟上の和解)なお、仮処分も暫定的な処置ですので保証金を立てさせられる場合があります。
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